『成瀬は天下を取りにいく』は、滋賀県大津市というふつうの街を舞台に、成瀬あかりという1人の女の子が「私はこうしたいからやる」と全力で生きる姿を描いた青春小説です。
閉店前の西武大津店に毎日通う、漫才コンビでM-1に挑む、丸坊主で高校入学式に現れる。
やっていることは少し変なのに、そのまっすぐさに周りの人も読んでいる私たちもどんどん勇気をもらってしまいます。
作品は2024年本屋大賞を受賞し、シリーズ累計150万部を突破。現在は続編『成瀬は信じた道をいく』、そして完結編『成瀬は都を駆け抜ける』(2025年12月1日発売予定)へとつながり、朗読劇やオーディオブックにも広がる“今もっとも熱い青春物語”になりました。
『成瀬は天下を取りにいく』を読む前に知っておきたいこと

- 作品の基本情報と今なぜ話題なのか
- どこで読める?配信ストア比較
- 無料で読める?
- rawは危険?
- 読む順番とシリーズ最新情報
- ドラマ化・朗読劇・オーディオブック最新情報
- 聖地・舞台はどこ?滋賀県大津市のリアルさ
- 登場人物
- 名言・名セリフ
- 作者と出版社
- 口コミ・評判・評価・レビュー
- この作品はどんな人におすすめ?
- よくある質問(FAQ)
作品の基本情報と今なぜ話題なのか
『成瀬は天下を取りにいく』は、宮島未奈さんのデビュー作で、2023年3月17日に新潮社から刊行された連作短編集です。
物語の主人公は滋賀県大津市に暮らす成瀬あかり。中学2年から高校3年までの数年間を、彼女の“やると決めたら全力でやりとおす”生き方と、そのそばで振り回されながらも支える幼なじみ・島崎みゆきの目線で描きます。
この作品は2024年本屋大賞を受賞し、第39回坪田譲治文学賞など数々の賞を次々と獲得しました。さらに続編『成瀬は信じた道をいく』とのシリーズで累計150万部を突破し、“今いちばん元気をくれる青春小説”として一気に全国区の存在になりました。
2025年6月には文庫版も発売され、価格は税込693円、新潮文庫で288ページという手に取りやすい形になりました。解説は『夜は短し歩けよ乙女』などで知られる森見登美彦さん。文庫化と同時にさらに読者層が一気に広がった印象があります。(新潮社)
正直にいうと、成瀬あかりは一見「ちょっと変な子」です。けれど読み進めるうちに、彼女のまっすぐさがどれだけ周りを救っているかに気づいて、「こんな友だちがそばにいたら人生変わってたな」としみじみ思わされます。
どこで読める?配信ストア比較
『成瀬は天下を取りにいく』は紙の本だけでなく、主要な電子書籍ストアでも配信されています。さらにオーディオブックで耳から楽しむこともできます。まずは電子書籍ストアを比較します。
| ストア名 | 特徴 | 読み放題はある? |
|---|---|---|
| ブックライブ | 会員登録で70%OFFクーポンがもらえることが多く、初回は好きな本1冊を大きく安く買えることがあります。ジャンルも漫画・小説・ビジネス書まで広いです。キャンペーンや毎日引けるクーポンガチャなど割引が多いです。 | なし。1冊ずつ購入か、ポイントコースでお金をチャージして使います。 |
| コミックシーモア | 漫画にとても強いストアです。作品数が多く、定期的なセールもあります。 | あり。読み放題ライト(月額の低いコース)と読み放題フル(より幅広いジャンル)があり、最初の7日間は無料体験になることがあります。漫画をたくさん読む人にはうれしい仕組みです。 |
| DMMブックス | 初回購入限定で70%OFFクーポン(割引上限は500円程度)が配られることがあり、まとめ買いが安くなります。大型セールや高いポイント還元もしばしば行われています。 | なし。買い切り型で、安く買って手元に残すタイプです。 |
| eBookJapan(イーブックジャパン) | 初回ログインでもらえる70%OFFクーポンが6回分使えるなど、はじめての人が特に安く買いやすい仕組みがあります。PayPay還元などのキャンペーンも定期的です。 | なし。無料公開作品や高還元セールが多い印象です。 |
どこがベストかは「どんな読み方をしたいか」で変わります。
1冊を安く試したいならブックライブの初回70%OFFクーポンが強いですし、たくさんまとめて買うならDMMブックスの大型セールやebookjapanの6回使える70%OFFクーポンが効きます。漫画版(コミカライズ)も読みたい、月額でがっつり読みたいという人はコミックシーモアの読み放題プランが向いています。
無料で読める?
まず公式に安心して楽しめる無料の入り口としては、各電子書籍ストアの「試し読み」や期間限定の無料公開、そしてAudible(オーディオブック)の無料体験があります。
Audibleでは、プロの声優・俳優による朗読で小説を耳から聴けます。Audibleのプレミアムプランは最初の30日間は無料体験ができ、その間は対象作品が聴き放題扱いになります。
無料期間中に解約すれば料金はかからず、途中で「やっぱり紙で読みたい」「電子がいいかも」と思っても、まずは雰囲気を味わえるのがありがたいところです。無料体験後は月額1500円で自動更新になるので、続けるかは自分で決められます。
「完全無料で小説本文のすべてを合法的に読める場所が常にある」という状況ではありません。なので、ずっと0円で読めると思わないでください!ガッカリしてしまいますよ!
ただ、割引クーポンや無料体験をうまく使えば、ほぼノーリスクで世界観にふれることは十分可能です。
rawは危険?
「raw」など違法アップロードは、2021年の法改正で漫画等のダウンロードも違法対象になりました。加えて海賊版サイトはマルウェア被害の温床でもあります。
安全面・法的リスクの両方から、正規の雑誌・公式アプリ・電子書店のみを利用しましょう。
迷ったら、公式の無料枠とABJマークのある正規ストアの試し読み・クーポンだけを使う——このシンプルなルールが自分と推しを守ります。
正規配信か迷ったらABJマークを確認。ホワイトリストも公開されています。
一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会
文化庁
ABJ
読む順番とシリーズ最新情報
『成瀬』シリーズは全3冊で、発売順に読むのがいちばんわかりやすいです。
まず1冊目『成瀬は天下を取りにいく』(2023年刊)は滋賀県大津市が舞台で、成瀬あかりが「この夏を西武に捧げる」と宣言して閉店前の西武大津店に毎日通ったり、漫才コンビでM-1を目指したり、坊主頭で高校入学式に現れたりする日々が描かれます。2024年本屋大賞を受賞し、税込693円の文庫版も発売されました。
2冊目『成瀬は信じた道をいく』(2024年1月24日発売)は、高3の秋から大学1年の年末年始までが舞台です。成瀬が“町の変な子”から“人の人生を本気で動かす存在”へ成長していく姿や、幼なじみの島崎みゆきとの心の距離の揺れが、より大人の視点で描かれます。
そして完結編となる3冊目『成瀬は都を駆け抜ける』は2025年12月1日発売予定です。舞台は京都。膳所高校を卒業し京大生になった成瀬が、「達磨研究会」など新しい仲間たちと一緒に、今度は“都そのもの”をかき回します。シリーズは累計150万部を突破し、この3冊目で大団円と公式に告知されています。
ドラマ化・朗読劇・オーディオブック最新情報
いまのところ、テレビドラマや実写映画としての正式な映像化発表(キャストや放送時期が公式発表された状態)は出ていません。ただ、人気や受賞歴、キャラクターのわかりやすさから「ドラマ化してほしい」「深夜帯でやれそう」といった声はずっと高まっています。
一方で、音で楽しむ動きはすでに実現しています。まず、Audibleなどのオーディオブックサービスで朗読版が配信されており、耳だけで物語世界に浸れるようになりました。Audibleは30日間無料体験があり、プロの声優・俳優による読み上げで、通勤中や家事の間でも物語に入りこめるのが魅力です。
さらに、2025年9月13日~15日には東京・草月ホールで朗読劇『成瀬は天下を取りにいく』が上演され、人気声優陣が日替わりキャストで参加しました。
原作の中でも特に印象的なエピソードを生で表現する舞台として話題になり、シリーズが「読む」だけでなく「観る・聴く」楽しみ方へ広がった瞬間でした。この朗読劇は、シリーズが本屋大賞を受賞し累計150万部を突破した勢いの中で企画・上演されたと紹介されています。
聖地・舞台はどこ?滋賀県大津市のリアルさ
物語の舞台は滋賀県大津市、とくに膳所エリアです。
作品中に出てくる「西武大津店」は実在した百貨店で、44年愛されたのち2020年8月31日に閉店しました。この“もう存在しない場所”が物語の核心として描かれることで、読者は「消えてしまう景色をどうやって心に残すか」という切ないテーマに自然と向き合うことになります。
読者の間では、膳所駅周辺の「ときめき坂」や、ふたりが漫才の練習をしたとされる公園、琵琶湖の遊覧船「ミシガン」など、実際に歩けるスポットをめぐる“聖地巡礼”も人気です。
町そのものが物語に息を吹きこんでいて、「この場所が好きなんだよ」と胸を張れる成瀬の愛情が、観光という形で現実の人の足を動かしているのは本当にすごいことだと思います。
登場人物
- 成瀬あかり
- 滋賀県大津市の中学生~高校生。やると決めたら本気でやる子で、西武大津店の最後の夏に毎日通ったり、漫才コンビ「ゼゼカラ」でM-1に挑んだり、坊主頭で高校入学式に現れたりします。目標は200歳まで生きること。周りの人の気持ちまで動かしてしまう存在です。
- 島崎みゆき
- 成瀬の幼なじみで語り手ポジション。「私は普通」と思っている子ですが、成瀬のすぐそばで見守り、ときに一緒に走る相棒です。ふたりで「ゼゼカラ」を組んでM-1に出ようとします。
- クラスメイトや地元の人
- 同級生や大人たちは最初、成瀬を「変な子」と見ますが、だんだん彼女に影響されて、自分の気持ちに正直に生きてみようと変わっていきます。物語はそれぞれの視点から成瀬を描き、彼女がただ目立つ子ではなく、人を前向きにする存在だとわかるようになっています。
名言・名セリフ
たとえば有名なのが「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」。この一言で物語は一気に走り出します。
他にも、成瀬は自分の人生を「200歳まで生きる計画」として本気でカレンダーに落としこんでいくし、M-1グランプリに挑戦すると言い出したら、相方のやる気が追いつくまで相方ごと引っ張っていきます。
常識とか正しさより「私はこうする」をちゃんと口にできる彼女の言葉は、ちょっと疲れた大人の心にも刺さります。「あ、私も自分のことを自分で決めていいんだな」と思わせてくれるのです。
作者と出版社
- 作者は宮島未奈さん。1983年静岡県富士市生まれ、滋賀県大津市在住。京都大学文学部卒です。2021年「ありがとう西武大津店」で「女による女のためのR-18文学賞」大賞・読者賞・友近賞を同時受賞し、そこから生まれた連作として『成瀬は天下を取りにいく』で商業デビューしました(2023年3月17日刊)。
- 『成瀬は天下を取りにいく』は新潮社から刊行されました。2024年本屋大賞や坪田譲治文学賞などを受賞し、シリーズは『成瀬は信じた道をいく』へ続き、累計150万部を突破しています。新潮社は単行本だけでなく新潮文庫から文庫版(税込693円)も出しており、朗読劇化やコミカライズなども含めてシリーズ展開を強く後押ししています。
口コミ・評判・評価・レビュー
口コミを読んでいて一番多い感想は“スカッとするのに、最後はちゃんと泣いちゃう”という矛盾みたいな気持ちだと思います。
以下はブックライブの作品ページのレビューをまとめたものです。
- 成瀬あかりという主人公がとにかく魅力的で、「我が道を行くのに人への思いやりもある」「同調圧力に動じない強さがクセになる」と評価されています。読者は彼女を見るだけで元気をもらえるという声が多いです。
- 島崎みゆきとのコンビ(幼なじみであり相棒)がすごく良い、とにかく尊い、という感想がたくさんあります。「成瀬は成瀬だけじゃなく、島崎がそばにいるからこそ好きになる」「2人の関係が泣ける」という声が目立ちます。
- 読みやすさをほめる声がとても多いです。「物語がスッと頭に入る」「短編の積み重ねでどんどん引き込まれる」「電車で読んだら笑ってしまったから危険」というくらい、テンポがよくてスキマ時間でも読める本として支持されています。
- 舞台が滋賀県大津市という実在の街で、高校生活や地元の空気がリアルに描かれているところに共感したという声があります。「本当に膳所にこういう子いそう」「自分の学生時代を思い出した」「地元が愛おしくなる」という感想が出ています。
- 終盤で成瀬の心情がしっかり描かれて、島崎との絆がはっきりするところで一気に泣かされた、という感想が非常に多いです。最初は「ちょっと変な子のおもしろエピソード」だと思っていたのに、最後は不意打ちで感動した、という声が目立ちます。
- 読後感については「癒やされる」「スカッとする」「ほのぼの」「アツい」「カッコいい」といった感情タグが並んでいて、読んで前向きになれた、気分が落ちていたときに助けられた、という口コミが繰り返し語られています。
- 物足りなかった点としては、「もっと読みたかった」「短編だからすぐ終わってしまって寂しい」という声もあります。ボリューム的にもっと成瀬と一緒にいたい、続編も読みたい、という欲が残るという指摘です。
この作品はどんな人におすすめ?
まず、青春小説が好きなら絶対刺さります。
でも、それだけではありません。大人の読者から「仕事でしんどい時に読んだら泣いた」「もういちど自分の好きに正直でありたいと思った」という感想が多いことが、この作品の面白いところです。
成瀬は“空気を読まない強い子”ではありません。
むしろ空気が読めすぎるからこそ、自分のルールを先に口にしておかないとつぶれてしまうタイプにも見えます。その姿が、読んでいる私たちに「私も私の機嫌をとっていいんだよ」と優しく教えてくれるんです。しんどい時の処方箋みたいな1冊です。
よくある質問(FAQ)
Q. このシリーズは完結しているのですか?
A. 物語は3部作として案内されており、最終巻『成瀬は都を駆け抜ける』が2025年12月1日に発売予定で「堂々完結」と告知されています。つまり、第3巻の発売でシリーズとしての大きな区切りがつく形です。
Q. ドラマ化・映画化はありますか?
A. 公式にキャスト・放送日が発表された実写ドラマ版や映画版は、2025年10月26日時点ではまだありません。ただ、朗読劇として舞台化され、オーディオブックでも展開されており、ファンの間では「映像化は時間の問題では?」という期待がとても強いです。
Q. 子ども(中学生)が読んでも大丈夫?
A. もともと主人公は中学生・高校生で、暴力的な描写や極端に過激な性的描写がメインになる作品ではありません。悩みや不安はリアルに描かれますが、読後感は前向きです。中高生が読んで「自分もこうやって生きていいんだ」と思えるタイプの物語だと感じます。
Q. 舞台のモデルになった場所は実在しますか?
A. 作中の西武大津店は実在した百貨店で、44年の歴史に幕を下ろし2020年8月31日に閉店しました。現在は跡地にマンションが建つなど、もう当時の姿は見られません。だからこそ、この小説は「もう戻らない時間を愛おしむ」物語として多くの人の胸に残っています。
『成瀬は天下を取りにいく』あらすじ徹底ガイド

- あらすじ(ネタバレなし)
- 物語はどんな構成?6つの短編で描かれる時間の流れ
- ネタバレあり あらすじ
- 読後に残るテーマとメッセージ
あらすじ(ネタバレなし)
中学2年の夏休み、滋賀県大津市に住む成瀬あかりは、幼なじみの島崎みゆきに「この夏を西武に捧げる」と宣言します。地元の百貨店・西武大津店が8月末で閉店してしまうと聞いた彼女は、その最後の夏を全力で見届けると決め、毎日通い、ローカル番組の生中継に映り続けようと本気で計画します。
島崎は「なんでそんなこと…」と思いながらも、突拍子もない行動力に巻き込まれていきます。
その後も成瀬は止まりません。ふたりは高校生になると、お笑いコンビ「ゼゼカラ」を組んでM-1グランプリに挑戦し、成瀬は突然丸坊主で入学式に現れたり、びわ湖大津観光大使に本気で応募したりと、常識のラインをいとも簡単に飛び越えていきます。
けれどそれは、ただの目立ちたがりではありません。成瀬は「自分の言葉で自分の人生を進めたい」と心から思っていて、その正直さが、島崎や家族、同級生、そして見守る大人たちの気持ちを少しずつ救っていきます。
読んでいると、部活や進路、家族や地元との距離感といった、とても身近な悩みがゆっくり浮かび上がります。成瀬はそれらを“深刻に悩み続ける”というより、“行動で押し切る”。その姿に、笑って、ちょっと泣いて、なんだか前を向きたくなる物語です。
物語はどんな構成?6つの短編で描かれる時間の流れ
『成瀬は天下を取りにいく』は、ひとつの長編というより短編連作の形になっていて、章ごとに少しずつ時間が進みます。章タイトルには「ありがとう西武大津店」「膳所から来ました」「レッツゴーミシガン」など、滋賀県大津市の具体的な場所や出来事が色濃く反映されています。
読者は、1本1本のエピソードを読むたびに「その時の成瀬」と「その時の島崎」に立ち会うことができ、ふたりの関係や心の距離が少しずつ変わっていくのを見届けられるのです。
構成が短編だからこそ、「仕事の休憩時間に1章だけ」「寝る前に1話だけ」という読み方でも満足感があります。テンポよく笑って、最後にちょっと胸があたたかくなるので、忙しい大人の読書にもやさしいつくりです。
ネタバレあり あらすじ
ここからは物語の核心に触れる内容を含みます。
成瀬と島崎は、閉店を控えた西武大津店に毎日通っては、ローカル番組「ぐるりんワイド」に映ることに挑みます。成瀬はただ目立ちたいのではなく、「最後の夏をぜんぶ見届ける」「この場所がちゃんとあったことを残す」という祈りのような気持ちで動いています。
その姿は、最初は呆れていた島崎の心を強く揺さぶります。ふたりは“変なことをする子”と“止める役”ではなく、“同じ時間を共有している仲間”になっていきます。
高校に入ると、ふたりは漫才コンビ「ゼゼカラ」を名乗りM-1グランプリにエントリーします。島崎にとってM-1は「無理だよ」と思う無茶ですが、成瀬にとっては「やると言ったらやる」の延長線。
ふたりが本気でステージに立つことで、観客として見ていた同級生たちの目線も少しずつ変わり、「成瀬って本当にやるんだな」という尊敬が芽生えていきます。それは島崎自身の自信にもつながります。
やがて、ふたりは「卒業」という別れを避けられない現実にぶつかります。成瀬は200歳まで生きるつもりで未来を語るのに、島崎は「私はそこまで見届けられないかもしれない」と切なく思う場面があります。
このズレは痛いのに、なぜか優しい。未来がどんな形になっても、ふたりの時間は確かにそこにあった、という実感がちゃんと残るラストになっています。読後には、胸の奥にじんわりとした温かさと、少しのさみしさが同時に残ります。
読後に残るテーマとメッセージ
『成瀬は天下を取りにいく』が読後に残すいちばん大きなメッセージは、「自分のやりたいことを自分で決めていい」ということだと思います。
成瀬あかりは空気を読まないのではなく、ちゃんとわかっていても「私はこうする」と宣言して動きます。そのまっすぐさが周りの人を少しずつ前向きにして、街の空気まで変えていきます。
自分の好きや、自分の町を誇っていいんだよ、と静かに背中を押してくれる物語です。
成瀬は天下を取りにいく あらすじ:まとめ
- 舞台は滋賀県大津市。西武大津店の最後の夏や琵琶湖など実在の場所が物語の中心になり、地元の空気ごと青春として描かれます。
- 主人公の成瀬あかりは「この夏を西武に捧げる」「M-1に出る」など宣言して本当にやりきる女の子で、周りの人の人生まで動かしていきます。相棒は幼なじみの島崎みゆきです。
- 物語は短編連作で進み、ふたりの中学~高校・卒業までを複数の視点から描きます。読みやすいのに最後は泣けるという感想がとても多いです。
- 続編『成瀬は信じた道をいく』(2024年1月24日発売)は高校3年の秋~大学1年までを描き、さらに世界が広がります。
- 完結編『成瀬は都を駆け抜ける』は2025年12月1日発売予定。舞台は京都。膳所高校を卒業した成瀬が京大生になり、新しい人間関係の中で「都」を巻き込んでいきます。シリーズ大団円と告知されています。
- シリーズは2024年本屋大賞を受賞し、累計150万部を突破。いま日本で最も読まれている青春小説シリーズのひとつです。
- 文庫版『成瀬は天下を取りにいく』は新潮文庫から発売され、税込693円という手に取りやすい価格で読めます。
- ドラマや映画は公式発表前ですが、朗読劇が2025年9月に草月ホールで上演され、Audibleのオーディオブックなど“聴く成瀬”の楽しみ方も広がっています。
- 「raw」など違法アップロードを探す読み方は、著作権やウイルス面で危険とされています。まずは公式の本・文庫・オーディオブックなど安全な方法で触れるのがおすすめです。



